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つながりブログ

2026年04月のブログ記事一覧

H先生と挑んだ文系から医学部への道

2026.04.15 ブログ

西新宿内科つながりクリニックの臼井靖博と申します。
当院の「つながりブログ」をご覧いただき、誠にありがとうございます。

今回は、私の高校時代のお話です。
市立下田中学校を卒業した私は同じく地元の県立下田北高校に進学しました。明治時代に私立豆陽中学として設立された歴史を持つ高校ですが、普通の田舎の公立高校で、進学校ではありませんでした。ちなみに現在は統廃合して下田高校と名称変更しています。

高校でも中学の同級生らと一緒に吹奏楽部に入り、3年生の時には吹奏楽コンクールで県大会に進むことができました。曲はベルリオーズの幻想交響曲。3年生の夏休みまで部活に明け暮れ、コンクールが終わってから受験勉強を始めるという、なんとものんびりとした受験生でした。進路についても中学時代の夢のまま決めていました。日本史が好きだった私は、「教員免許をとって、中学、高校で歴史を教えながら、吹奏楽部の顧問になりたい」と考え、当然のように文系コースを選択していました。

そんな私が医学部受験を志したのは、3年生の夏休みのことです。なぜ急に医師になりたいと思ったのか――それは精神科医である叔母の影響でした。叔母は下田で開業し、今も現役で診療を続けています。当時の私は、朝早くから夜遅くまで精神科に限らず、すべての患者さんを診療し、往診にも出かけていく叔母の姿に「生涯をかけるに値する仕事だ」と肌で感じていました。

3年生の担任は国語のH先生でした。夏休みにあった進路相談で私はいきなり「医学部に行きたいです」と伝えました。H先生は「何を血迷っているのか」という表情で私を見つめ、「理系の科目をとっていないから医学部を受験することはできないし、そもそも今の学力では足りない。それに私立はお金がかかるよ」と諭すようにおっしゃいました。H先生に「私立に行けるお金はないので、国公立に行くつもりです」と宣言したのを覚えています。

とはいえ私自身も医学部に行ける学力がないことや、自分が選択していない理系科目が必要なことは分かっていましたので、現役合格は無理だろうと思っていました。しかし、時間を無駄にするわけにはいきません。今の私でも受験できる国公立の医学部はないかと受験情報誌「蛍雪時代」を調べました。そして、ほとんどの大学が理系科目を選択していないと受験すらできない中、山形大学医学部の一般推薦だけが受験可能であることを見つけたのです。

すぐにH先生に伝えて推薦状をお願いしました。先生は「神様仏様を思い浮かべて、(推薦状を)書いてみるよ」と快く引き受けてくださいました。また、受験科目について入試要項には「小論文、面接」としか書いていなかったため、H先生は直接、山形大学に問い合わせてくれました。おかげで小論文といっても、英語の長文を読んだ上で論述する形式であることが分かり、そこから先生によるマンツーマンでの小論文の特訓が始まりました。

受験当日、山形大学は雪に覆われていました(人生で初めて見る雪でした)。小論文の英語は、H先生の特訓の成果か、不思議なくらいすんなりと理解できました。同時に「僕がこれだけ分かるなら、みんなもスラスラ解けているのだろうな」と思ってもいました。

合格発表の日。新聞で私が合格していることが分かった叔母が、「合格したよ!」と大声をあげて私の部屋に飛び込んできました。一瞬、何が起こったのかわかりませんでしたが、次の瞬間には「やったあ!」と抱き合って喜んでいました。その夜は興奮してとうとう一睡もできませんでした。

翌朝、眠い目をこすりながら登校して職員室に直行し、H先生に「先生、合格しました」と報告しました。先生はキツネにつままれたような顔で「嘘だろ?」と一言、そして「まさか受かるとは思わなかったけど、臼井なら、もしかしたらと思っていたよ。おめでとう」と言ってくださいました。他の先生方も集まって「おめでとう、よくやったな」と拍手をしてくれました。

このように、私は医学部を目指す受験生として、ありえない過程を経て医師になりました。そんな私を支えてくださったH先生はその後、下田高校の校長になられ、ライフワークの漱石研究や、地元の文学史の編纂などで活躍されていましたが、先日鬼籍に入られました。先生のご冥福をお祈りいたします。

喘息らしさを測る③ 血清総IgEから分かるアレルギーとのつながり

2026.04.01 ブログ

西新宿内科つながりクリニックの臼井靖博と申します。
当院の「つながりブログ」をご覧いただき、ありがとうございます。

明確な診断基準がない喘息ですが、「タイプ2炎症」という「かいかいぐじゅぐじゅ」な気道の炎症(ただれ)が主な原因であることがわかってきました。前回、前々回のブログでは、このタイプ2炎症の有無、つまり「喘息らしさ」を持っているかどうかを客観的に判断する3つの指標のうち、呼気一酸化窒素(FeNO)と血中好酸球数についてご説明しました。今回は、3つ目の指標、血清総IgEについて書きたいと思います。

IgEは、免疫グロブリンと呼ばれるたんぱく質の一種で、アレルギー反応と深い関係があります。花粉、ダニなどの異物(アレルゲン)が体内に入ると、まずB細胞というリンパ球がIgEを産み出します。皮膚や気道などには、肥満細胞という細胞があるのですが、IgEはこの肥満細胞に結合します。体内に再びアレルゲンが入ってくると、IgEがアレルゲンを捕まえ、それを合図に肥満細胞からヒスタミンという物質が放出されます。本来、ヒスタミンはくしゃみ、鼻水、涙、咳などを起こすことで体の中から異物を排除する防御機能を担っているのですが、この反応が強すぎるとつらいアレルギー症状になってしまいます。皆さんご存じの花粉症治療薬は、抗ヒスタミン薬と言われ、このヒスタミンの作用をブロックすることで症状を緩和します。

血清総IgEとは血液中にあるIgEの総量のことで、採血して測ります。スギ、ダニ、カビなどいろいろなものに対してアレルギーがある患者さんでは、数値が高くなる傾向があります。アレルゲンの影響を受けるため、数値が大きく上下するのですが、アトピー性皮膚炎がある喘息患者さんでは、常に高い値を示します。IgEの検査には、血清総IgEと特異的IgEの2種類があり、血清総IgEがアレルギー体質の有無や傾向を示すのに対し、特異的IgEはどのアレルゲンに反応しているのかとその反応の強弱を教えてくれます。

喘息に関係するアレルゲンの多くは、花粉、ハウスダスト、ダニ、動物の毛など、気道に吸い込むことでアレルギー反応を起こすタイプのものです。日本人では特にダニが強く関係していると報告されています。血清総IgEと特異的IgEを測定することで、喘息と合併することが多いアトピー性皮膚炎も合わせた治療やアレルゲンの回避、ダニ舌下免疫療法などを行うことができ、喘息患者さんの生活の質の向上につながると考えられます。

私は、血清総IgE値が非常に高く、いろいろなアレルゲンに反応してIgEがたくさん作られてしまう体質(これを「アトピー素因」といいます)を持つ喘息患者です。そのため、様々な刺激によって咳や喘鳴が出て、皮膚がただれたり、かゆみが起きたりしてきました。アトピー素因は、小児期に改善することもあれば、私のように成人になっても残ってしまう場合もあります。私と同じようにアトピー素因を持つ患者さんは「咳が出るのは当たり前」「かゆくなるのは当たり前」の生活を長く続けていることが少なくないのですが、吸入ステロイドや外用薬、注射で行う生物学的製剤を上手に組み合わせて、タイプ2炎症を抑える治療をしっかり行うことで、当たり前だった咳とかゆみの毎日を変えられるようになってきました。そのお手伝いができればうれしく思います。