2025年10月のブログ記事一覧
そもそも喘息って?
2025.10.01 ブログ
西新宿内科つながりクリニックの臼井靖博と申します。
当院の「つながりブログ」をご覧いただき、ありがとうございます。
前回のブログでは、喘息が明確な診断基準がない、あいまいな病気であるとお伝えしました。ではそもそも喘息とはどんな病気なのでしょう?
私が喘息に悩まされていた50年ほど前は、喘息とは「気管支が発作的に収縮して狭くなり、ぜーぜーしたり、息苦しくなったりする病気」とされ、苦しくなった時に治療をすればよいものと考えられていました。
その後、喘息のしくみが徐々に解明され、現在では「気管支の慢性的な炎症(ただれ)が、ダニ・ハウスダストといったアレルゲンや、ウイルス感染、大気汚染、気温や気圧変動などに敏感に反応し、炎症が悪化することで気管支が狭くなり、咳や痰とともにぜーぜーという喘鳴(ぜんめい)や息苦しさといった、症状の悪化(増悪:ぞうあく)を繰り返す病気」であることがわかってきました。
この炎症(ただれ)は「タイプ2炎症」と呼ばれ、リンパ球、好酸球といった白血球やインターロイキンなど、炎症を形作る細胞や物質が複雑に絡み合って形成されています。喘息患者さんの80~90%にこのタイプ2炎症があるとされ、実は、アトピー性皮膚炎の炎症(ただれ)と同じであることがわかっています。アトピー性皮膚炎の「かゆくてぐじゅぐじゅするただれが、アレルギーや気温、湿度などで繰り返す」状態が、気管支でも起きている、と想像してみてください。喘息とアトピー性皮膚炎は、タイプ2炎症が気管支に起こるか、皮膚に起こるかの違いであって、病気のしくみは同じといってよいと思います。そして、アトピー性皮膚炎のただれが長期にわたると、皮膚が赤く、硬くなっていくことがあるのと同様に、気管支のただれも長く続いてしまうと、「リモデリング」と呼ばれるただれの固定化が起こり、薬が効きにくくなって、呼吸機能が低下してしまいます。
アトピー性皮膚炎では、「かいかいぐじゅぐじゅのただれ」を抑えるため、ステロイド剤の軟膏を使用しますが、喘息でも同じように、気管支のただれを抑えるため、ステロイドの吸入薬を使用します。この吸入薬を咳やぜーぜーがひどくなった時だけに使用するのではなく、症状のないときにも継続的に使用することで、ただれを改善・修復し、増悪や呼吸機能の低下を防止することができます。
私は幼少期からアレルギーが強く、物心がついたころから毎晩のように喘息の発作に悩まされていました。同時にアトピー性皮膚炎も患っていました。現在でも汗や入浴後の温度変化、靴下のゴムなどで皮膚が赤くなり、強いかゆみを起こしています。しかし、幼い頃から長年付き合っている症状のため、「かゆいのがあたりまえ、咳やぜーぜーするのがあたりまえ」と、つい自分自身の治療は怠りがちになってしまっていました。患者さんに指導していながら、まさに医者の不養生です。なので、同じ悩みを持つ患者さんが、半ばあきらめてしまう気持ちが本当によくわかります。
しかし「かゆくてぐじゅぐじゅする皮膚、咳やぜーぜーする日常」は、タイプ2炎症を抑える治療で変えることができます。患者さんの「つらいのが当たり前」を変えるお手伝いができれば幸いです。