2025年12月のブログ記事一覧
昼の咳と夜の咳
2025.12.01 ブログ
西新宿内科つながりクリニックの臼井靖博と申します。
「つながりブログ」をご覧いただき、ありがとうございます。
当院の咳問診には「咳が最もひどくなる時間帯はいつですか」という質問があります。「ずっと咳が出ているのでわからない」という患者さんも多くいらっしゃいますが、詳しくお聞きするのには理由があります。実は、昼と夜、咳の出る時間帯で咳の原因が異なることがあるのです。
主に昼間に咳がひどくなる場合、咳の原因として、のどのアレルギーや後鼻漏に伴う咳、胃食道逆流症などが考えられます。胃食道逆流症の場合は特に食後に咳が悪化する傾向があります。いずれものどや気道にある咳のセンサー「咳受容体」が刺激されて過敏になっていることが原因だと考えられています。
一方、夜寝ている間から早朝にかけて咳がひどくなる場合、最初に考えられるのが喘息です。「咳で目が覚める」「咳で寝付くことができない」といった症状があれば、喘息の可能性がさらに高くなります。
夜は、細菌やウイルスなどの外敵が気管支や肺に侵入しないように、副交感神経という自律神経の働きによって気道から出る分泌物が増え、気道がむくみやすくなります。喘息の患者さんでは、この働きが過剰になり、分泌物がより多く出てしまいます。もともと喘息とは、気管支に慢性的に炎症(ただれ)が起きている病気です。このただれがあることで、喘息の患者さんの気道はとても敏感で、分泌物が増えたなどのちょっとした刺激でも気管支の筋肉が収縮して咳が誘発されるのです。
また昼夜を問わず断続的に続く咳としては、マイコプラズマや百日咳など感染症によるものが考えられます。もちろん、これらはあくまでも目安です。喘息の患者さんで、夜だけでなく日中も咳がひどいことはよくあることです。最近の研究では、喘息の場合も咳受容体が過敏になることで、日中の咳につながっていることがわかってきました。
いつ咳がひどくなるかを知ることは、咳の診断をする上でとても重要な手がかりとなります。診察室で「昼なのか夜なのか」「食後はどうか」など細かくお聞きすることがあるかと思いますが、ご協力をお願いします。