はじめまして
西新宿内科つながりクリニックの臼井靖博と申します。
「つながりブログ」をご覧いただき、ありがとうございます。
医師としての私を育ててもらったここ西新宿に今春、西新宿内科つながりクリニックを開院して半年が過ぎました。「つながり」の輪をもっと広げたい、深めたいと、このたび「つながりブログ」を始めることにしました。
病気のことや体のことなど医療について分かりやすくお伝えすると同時に、治療にあたって心がけていることや患者さんとの出会いの中で学んだこと、私の生い立ちなどもつづっていく予定です。このブログを通じて、西新宿内科つながりクリニックをより身近に感じていただければ幸いです。どうぞ末永くお付き合いください。
マイコプラズマ感染症について
さて、いま全国的にマイコプラズマ感染症が猛威を振るっています。
当院を受診される咳の患者さんでも、マイコプラズマ感染症と思われる方が多数いらっしゃいます。
マイコプラズマは細菌とウイルスの中間に位置する病原体で、小児が感染することが多く、発熱、咽頭痛といった風邪症状に始まり、次第にコンコンと乾いた咳(乾性咳嗽〈がいそう〉)が出現します。ひどいときは1-2か月続くことがあります。感染者のうち、10-20%が肺炎を併発するとされています。
2-3週間の潜伏期をもって飛沫感染をするため、コンコン咳をしているお子さんを看病している親御さんが後から発症し、肺炎になってしまうといった経過をとることも少なくありません。また、「歩く肺炎」と言われるように、ひどい咳をしている割には元気であることも大きな特徴です。乾いた咳が長引く患者さんで、家族にも同様の症状がある場合、最初に疑うべき感染症のひとつです。
診断には、肺炎の有無をみるため胸部レントゲン検査が必須になります。元気な割に、派手な肺炎像が写ることも特徴の一つといえます。咽頭ぬぐい液による迅速抗原検査もあります。当院でも、疑われる患者さんに実施していますが、マイコプラズマは声帯より下の気道(下気道)で増殖し、声帯より上の気道(上気道)の菌量は下気道の約1%以下のため、診断に至らないこともあります。
同様に咽頭ぬぐい液を用いる、LAMP法というマイコプラズマのDNAを増幅する検査法もあります。迅速検査に対して精度は上がりますが、結果が分かるまでに3-4日を必要とします。採血して抗体検査をすることもありますが、感染してすぐの段階では抗体価が上がっていないことがあり、4週間あけた2回の採血を比較して、4倍以上抗体価が上がっていれば診断が確定となります。しかし、そのころには治っていることも多く、実用性に乏しいという欠点があります。
マイコプラズマは、細菌が持つ細胞壁をもたないため、細胞壁を破壊するペニシリン系やセフェム系の抗菌薬は無効です。前医でこれらの抗菌薬が投与されているにもかかわらず、症状が改善しないときは、マイコプラズマを疑う重要な情報です。 マクロライド系、テトラサイクリン系、キノロン系の抗菌薬は有効ですが、近年、マクロライド系が効きにくいマイコプラズマが増えており 、マクロライド投与後も改善が得られず、キノロン系の投与で改善を認める場合もあります。
マイコプラズマ感染症は、総合的に判断して治療をすることが重要であると思います。
マイコプラズマ感染症をご心配されている方のご来院をお待ちしております。