喘息は波の病気です
西新宿内科つながりクリニックの臼井靖博と申します。
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2026年もよろしくお願いいたします。
私は幼少期からアレルギーが強く、物心がついたころから、毎晩のように喘息の発作に悩まされていました。止まらない咳と痰、ぜーぜーして思うように息を吐くことができず、しまいには息を吸うことも難しくなり、「このまま息ができなくなるのかな?」という恐怖にさらされたことを、今でも鮮明に記憶しています。ただ、子どもながら、夜になると苦しくなり、日中になると良くなることを自然と理解していました。また、春と秋の寒暖差が大きくなる時期には、決まって悪くなることも自覚していました。
喘息には元々、日中は症状が軽くなり、夜間と早朝に悪くなる日内変動、季節の変わり目に悪くなる季節性変動という性質があります。これは外気温や湿度、ほこりやダニなどのアレルゲン、自律神経の変化に対し、喘息の炎症を起こしている気管支が過敏に反応してしまう、気道過敏性によるものと考えられています。このため、寄せては返す波のように症状が良くなったり悪くなったりを繰り返してしまうのです。喘息はまさに波の病気なのです。
長びく咳で来院した患者さんが喘息と診断され、吸入ステロイドを開始すると、比較的速やかに咳が止まり、夜、咳で眠れないことがなくなります。多くの患者さんは治ってしまったと思い、治療を中断してしまいますが、これは一時的に波が小さくなっただけのことが少なくありません。季節が変わったり、風邪をひいたりといったきっかけで再び波が大きくなると、咳、痰、ぜーぜーという喘鳴(ぜんめい)が繰り返し起こってしまうのです。波の大きさや幅は、人それぞれ違いますので、治療を中断してもしばらくは何も起きない人もいれば、すぐに悪くなる人もいます。
吸入ステロイドを中心とした喘息の治療薬は、喘息の波を小さくする「波消しブロック」であり、大きな発作―高波―になるのを防ぐ「防波堤」であると考えていただくとわかりやすいと思います。症状のない時にも治療を続けると、波消しブロックや防波堤が築かれるので喘息の波が小さく穏やかになり、大きな発作―高波―につながることもなくなります。そして、治療の強さ―ブロックや防波堤の大きさ―も徐々に小さくすることができます。
そうは言っても、「何も症状がないのに薬を続けるのはなぁ」と思われるのは当然だと思います。喘息持ちの医者だからこそ、患者さん一人ひとりの価値観、すなわち「吸入を続けることが、自分の生活、人生にメリットがあるのか」を一緒に考えていきたいと思っています。
写真は、前回のブログ「S先生」でもご紹介した、私のふるさと下田にある鍋田浜という浜辺です。遠浅の入江で、台風が来ても大きな波が来ないので、昔は船の風待ちに利用されていたそうです。継続的な治療を行うことで、喘息の波を鎮めて、この鍋田浜のように静かで穏やかな状態になることを目指しましょう。
