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ブログの記事一覧

喘息らしさを測る① FeNOという道しるべ

2026.02.01

西新宿内科つながりクリニックの臼井靖博と申します。
当院の「つながりブログ」をご覧いただき、ありがとうございます。

喘息は診断基準のない、あいまいな病気です。糖尿病であれば血糖値やヘモグロビンA1c(HbA1c)、尿糖などの数値で客観的に診断し、治療を始めた後も定期的に検査することで、良くなっているか悪くなっているかを判断できます。一方、喘息の場合は、症状の詳細やアレルギーの有無など詳しい問診を行って「喘息らしさ」を集め、それらを元に診断するため、客観的な指標がありません。治療効果の評価も「ゼーゼーしなくなった」「咳が出なくなった」といった患者さん自身の主観が頼りです。そもそも明確な診断基準のないものを診断するのは専門医でも勇気がいります。患者さんが「自分は本当に喘息なのか?」「良くなっているのか、悪くなっているのか?」と不安になってしまうのも当然だと思います。では、喘息らしさや病状の変化を客観的に評価することはできないのでしょうか?

以前のブログで、喘息は「タイプ2炎症」という「かいかいぐじゅぐじゅ」な気道の炎症(ただれ)が主な原因であると書きました(2025.10.1「そもそも喘息って」)。近年、このタイプ2炎症の有無、つまり「喘息らしさ」を持っているかを客観的に判断する指標として、呼気一酸化窒素(FeNO)、血中好酸球数、血清総IgEという3つが活用されるようになっています。それぞれボリュームが多くなるので、今回はその中でもFeNOについて取り上げます。残る二つは次回以降、説明していきたいと思います。

FeNOは、下の写真にあるように、専用の機械に10秒ほど息を吐いてもらうだけで簡単に測定できます。タイプ2炎症があると、吐いた息の中に含まれる一酸化窒素(NO)が増えることを根拠にしています。感染症や喫煙などの影響を受けるため、状況に応じた判定が必要ですが、呼吸器学会、喘息学会のガイドラインでは、22ppb以上ならタイプ2炎症があると考える、と示されています。

FeNOは、治療の質を高める上でも役立つ指標です。吸入ステロイドなどによる治療を始めた後や治療中に定期的にFeNOを測定し、その値に応じて治療内容を調整すると、患者さんの主観的な評価だけを頼りに治療内容を調整した場合に比べて、喘息の増悪を防ぎ、呼吸機能の低下を抑えられることが報告されています。また、長引く咳の原因を特定し、適切な咳診療を行う上でも欠かせない検査です。当院では、咳でお悩みの患者さんに対して積極的に活用し、客観的な「喘息らしさ」の評価をした上で適切な治療を行うようにしております。

これまでの喘息診療では、明確な拠りどころがなかったため、診断する側も手探りになってしまい、治療がなかなかうまく進まないことが少なくありませんでした。しかしFeNOは、糖尿病におけるHbA1cと同じように、患者さんと医療者が治療の進み具合を確認しながらともに歩くための道しるべのような役割を果たせるものかもしれません。

手を当てること

2026.01.15

西新宿内科つながりクリニックの臼井靖博と申します。
当院の「つながりブログ」をご覧いただき、ありがとうございます。

2026年、新しい1年が始まりました。年の初めということで、少し所信を述べたいと思います。

私が医師という人生に踏み出してから今年で32年になります。以来、研修医として、中堅医として、指導医として、地域の診療所の医師として、様々な知識や経験を積んで参りました。しかしこの30余年、変わらずにずっと大切にしていることがあります。それは

「手を当てること」

古来絶えることなく、病める人々に手を当てることで、医療者は病の原因を探し、診断をしてきました。治療法が限られる中でも、手を当てることで、痛みや苦しみを和らげる努力をしてきました。それが「手当て」の語源なのだと思います。

医療技術の進歩は目覚ましく、AIやロボットなど、医療者の代わりを果たす技術が広がりつつあります。正確な診断、治療は良い手当てにつながります。上手に活用することはとても大切なことだと思います。

しかし、実際に手を当てられるのは、同じ人間である医療者だけです。
私は医師として、人間として、これからも一途にずっと患者さんに手を当て続けていきたいと思っています。

喘息は波の病気です

2026.01.04

西新宿内科つながりクリニックの臼井靖博と申します。
当院の「つながりブログ」をご覧いただき、ありがとうございます。
2026年もよろしくお願いいたします。

私は幼少期からアレルギーが強く、物心がついたころから、毎晩のように喘息の発作に悩まされていました。止まらない咳と痰、ぜーぜーして思うように息を吐くことができず、しまいには息を吸うことも難しくなり、「このまま息ができなくなるのかな?」という恐怖にさらされたことを、今でも鮮明に記憶しています。ただ、子どもながら、夜になると苦しくなり、日中になると良くなることを自然と理解していました。また、春と秋の寒暖差が大きくなる時期には、決まって悪くなることも自覚していました。

喘息には元々、日中は症状が軽くなり、夜間と早朝に悪くなる日内変動、季節の変わり目に悪くなる季節性変動という性質があります。これは外気温や湿度、ほこりやダニなどのアレルゲン、自律神経の変化に対し、喘息の炎症を起こしている気管支が過敏に反応してしまう、気道過敏性によるものと考えられています。このため、寄せては返す波のように症状が良くなったり悪くなったりを繰り返してしまうのです。喘息はまさに波の病気なのです。

長びく咳で来院した患者さんが喘息と診断され、吸入ステロイドを開始すると、比較的速やかに咳が止まり、夜、咳で眠れないことがなくなります。多くの患者さんは治ってしまったと思い、治療を中断してしまいますが、これは一時的に波が小さくなっただけのことが少なくありません。季節が変わったり、風邪をひいたりといったきっかけで再び波が大きくなると、咳、痰、ぜーぜーという喘鳴(ぜんめい)が繰り返し起こってしまうのです。波の大きさや幅は、人それぞれ違いますので、治療を中断してもしばらくは何も起きない人もいれば、すぐに悪くなる人もいます。

吸入ステロイドを中心とした喘息の治療薬は、喘息の波を小さくする「波消しブロック」であり、大きな発作―高波―になるのを防ぐ「防波堤」であると考えていただくとわかりやすいと思います。症状のない時にも治療を続けると、波消しブロックや防波堤が築かれるので喘息の波が小さく穏やかになり、大きな発作―高波―につながることもなくなります。そして、治療の強さ―ブロックや防波堤の大きさ―も徐々に小さくすることができます。

そうは言っても、「何も症状がないのに薬を続けるのはなぁ」と思われるのは当然だと思います。喘息持ちの医者だからこそ、患者さん一人ひとりの価値観、すなわち「吸入を続けることが、自分の生活、人生にメリットがあるのか」を一緒に考えていきたいと思っています。

写真は、前回のブログ「S先生」でもご紹介した、私のふるさと下田にある鍋田浜という浜辺です。遠浅の入江で、台風が来ても大きな波が来ないので、昔は船の風待ちに利用されていたそうです。継続的な治療を行うことで、喘息の波を鎮めて、この鍋田浜のように静かで穏やかな状態になることを目指しましょう。

S先生

2025.12.15

西新宿内科つながりクリニックの臼井靖博と申します。
当院の「つながりブログ」をご覧いただき、誠にありがとうございます。

昨年11月に始めたつながりブログ、おかげさまで無事1年を迎えることができました。そこで今月から毎月1日と15日の月2回更新を目指していこうと考えています。1日はこれまで通り体や病気、健康に関することを、15日は私の生い立ちや思い出話、日々の暮らしや出会いのなかで感じたことなどを綴っていきます。

今回は、私の自己紹介も兼ねた思い出話を少々。
本年1月のブログ「2025年もよろしくお願いします」の続きとなります。

伊豆・下田の商店街にある洋服店の息子として生まれた私は、そのまま地元の保育園、幼稚園に通い、多くの友達とともに市立下田小学校に入学しました。昭和世代にはご理解いただけると思いますが、当時の児童数は、田舎の小学校でさえ1200人を超えていました。

小学校3、4年生の担任が、S先生でした。
S先生は、いつも背筋がピンと伸び、凛としていて、一見怖そうなのですが、話しかけるといつも笑顔で接してくれる、優しい先生でした。私のことをとてもかわいがってくださり、そのころの私は、先生に褒められたいばかりに漢字や計算練習の宿題を毎日欠かさずやっていました。

通っていた小学校にはプールがなかったため、水泳の授業は鍋田浜という波の穏やかな小さな浜辺で行っていました。浜に着いて、先生も子どもたちも水着になったときです。S先生の背中に大きな傷があることに気づきました。先生は軍隊経験があり、敵に切られて負傷した傷跡でした。友達のなかには、怖がって近づかない子もいましたが、私はその傷に驚いたものの、全く気にせず、「ブイまでいくぞ~。乗るか?」といってくれた先生の背中に飛び乗り、沖の方まで連れて行ってもらいました。

ある日の終礼の時、先生が黒板に「精進」という言葉を書かれました。小3の私には正直、先生の説明がよく理解できなかったのですが、どうやら「一つのことをあきらめずにコツコツ続けること」が大事なのだと教わったような気がして、宿題ノートの表紙に「精進」と書きました。何日か経って、それを見つけた母親に「あんた、この言葉どこで教わったの?」と聞かれたことがありました。「S先生に教わったんだよ。よくわからなかったけど、いい言葉だなあと思って」と答えたことを覚えています。

先日、実家に帰った時に、18歳の私がS先生に宛てた手紙が出てきました。山形大学医学部に入学した時に送ったものでした。実はちょうど同じ頃、祖父も先生にお礼の手紙を出していて、先生から祖父への返書の中に、私が書いた手紙のコピーが同封されていたそうです。その手紙の中で私は「何事にも努力精進し、少しでも大きな人間になれたらと思っています。」と書いていました。

医師になって30年近く経ちましたが、先生の教えを守り、生涯、努力精進を続けていきたいと思っています。

写真は鍋田浜です。遠浅の入り江にできた小さな浜辺です。

昼の咳と夜の咳

2025.12.01

西新宿内科つながりクリニックの臼井靖博と申します。
「つながりブログ」をご覧いただき、ありがとうございます。

当院の咳問診には「咳が最もひどくなる時間帯はいつですか」という質問があります。「ずっと咳が出ているのでわからない」という患者さんも多くいらっしゃいますが、詳しくお聞きするのには理由があります。実は、昼と夜、咳の出る時間帯で咳の原因が異なることがあるのです。

主に昼間に咳がひどくなる場合、咳の原因として、のどのアレルギーや後鼻漏に伴う咳、胃食道逆流症などが考えられます。胃食道逆流症の場合は特に食後に咳が悪化する傾向があります。いずれものどや気道にある咳のセンサー「咳受容体」が刺激されて過敏になっていることが原因だと考えられています。

一方、夜寝ている間から早朝にかけて咳がひどくなる場合、最初に考えられるのが喘息です。「咳で目が覚める」「咳で寝付くことができない」といった症状があれば、喘息の可能性がさらに高くなります。

夜は、細菌やウイルスなどの外敵が気管支や肺に侵入しないように、副交感神経という自律神経の働きによって気道から出る分泌物が増え、気道がむくみやすくなります。喘息の患者さんでは、この働きが過剰になり、分泌物がより多く出てしまいます。もともと喘息とは、気管支に慢性的に炎症(ただれ)が起きている病気です。このただれがあることで、喘息の患者さんの気道はとても敏感で、分泌物が増えたなどのちょっとした刺激でも気管支の筋肉が収縮して咳が誘発されるのです。

また昼夜を問わず断続的に続く咳としては、マイコプラズマや百日咳など感染症によるものが考えられます。もちろん、これらはあくまでも目安です。喘息の患者さんで、夜だけでなく日中も咳がひどいことはよくあることです。最近の研究では、喘息の場合も咳受容体が過敏になることで、日中の咳につながっていることがわかってきました。

いつ咳がひどくなるかを知ることは、咳の診断をする上でとても重要な手がかりとなります。診察室で「昼なのか夜なのか」「食後はどうか」など細かくお聞きすることがあるかと思いますが、ご協力をお願いします。

静かな同志 — AIとの付き合い方 —

2025.11.01

西新宿内科つながりクリニックの臼井靖博です。
当院の「つながりブログ」をご覧いただき、誠にありがとうございます。

今回は、ブログ開設1周年を機に少し趣向を変えて、AIとの付き合い方について綴ってみました。

AIは、私にとって静かな同志です。
丁寧に話を聞き、学習と記憶を繰り返し、いつも冷静に共感し、提案してくれる。ときに文章を整えてくれたり、考えを整理してくれたり、まるでとても優秀で忠実な家臣のようです。

しかし、忠実な家臣は、その忠実さゆえに、主君の自己顕示欲を満たす進言しかしなくなることがあります。主君はやがて自己満足に酔い、その結果、自分で考えることを手放してしまうかもしれません。歴史を振り返れば、忠義の厚さがかえって主君を滅ぼした例も少なくありません。

だからこそ、私はAIを単なる家臣とは考えません。ともに考え、ともに歩む「静かな同志」であってほしいのです。忠実でありながらも、時に私を戒め、問いかけてくれる存在。その沈黙の対話の中にこそ、新しい言葉や着想が生まれると信じています。

このブログ自体、まさにその実践です。普段は自分の手で文章を作成し、スタッフとディスカッションして校正をしていますが、今回は実験的にAIと対話をしながら作成してみました。題名を置き、コンセプトを定め、AIに意見を求め、返ってきた言葉を吟味し、批判を挟み、再び練り直す。その繰り返しの中で、文章はだんだんと私の声に近づいていきました。

AIは確かに便利な道具です。しかし、それ以上に「静かな同志」──ともに考え、ともに歩む存在であってほしい。私の言葉を映し返し、ときに思いもよらぬ視点を差し出す。だが最終的な責任を負うのは、やはり私自身です。診療と同じく、道具を使う目的は常に「人と向き合う時間を守ること」にあります。

だから、これからもAIと対話を重ね、ともに歩きながら、批判の目を忘れることなく、自分の言葉を紡いでいきたいと思います。

静かに、まっすぐに。

本稿は筆者の主導で作成し、制作過程でAIを補助的に用いました。事実確認と最終判断は筆者が行っています。

そもそも喘息って?

2025.10.01

西新宿内科つながりクリニックの臼井靖博と申します。
当院の「つながりブログ」をご覧いただき、ありがとうございます。

前回のブログでは、喘息が明確な診断基準がない、あいまいな病気であるとお伝えしました。ではそもそも喘息とはどんな病気なのでしょう?

私が喘息に悩まされていた50年ほど前は、喘息とは「気管支が発作的に収縮して狭くなり、ぜーぜーしたり、息苦しくなったりする病気」とされ、苦しくなった時に治療をすればよいものと考えられていました。
その後、喘息のしくみが徐々に解明され、現在では「気管支の慢性的な炎症(ただれ)が、ダニ・ハウスダストといったアレルゲンや、ウイルス感染、大気汚染、気温や気圧変動などに敏感に反応し、炎症が悪化することで気管支が狭くなり、咳や痰とともにぜーぜーという喘鳴(ぜんめい)や息苦しさといった、症状の悪化(増悪:ぞうあく)を繰り返す病気」であることがわかってきました。

この炎症(ただれ)は「タイプ2炎症」と呼ばれ、リンパ球、好酸球といった白血球やインターロイキンなど、炎症を形作る細胞や物質が複雑に絡み合って形成されています。喘息患者さんの80~90%にこのタイプ2炎症があるとされ、実は、アトピー性皮膚炎の炎症(ただれ)と同じであることがわかっています。アトピー性皮膚炎の「かゆくてぐじゅぐじゅするただれが、アレルギーや気温、湿度などで繰り返す」状態が、気管支でも起きている、と想像してみてください。喘息とアトピー性皮膚炎は、タイプ2炎症が気管支に起こるか、皮膚に起こるかの違いであって、病気のしくみは同じといってよいと思います。そして、アトピー性皮膚炎のただれが長期にわたると、皮膚が赤く、硬くなっていくことがあるのと同様に、気管支のただれも長く続いてしまうと、「リモデリング」と呼ばれるただれの固定化が起こり、薬が効きにくくなって、呼吸機能が低下してしまいます。

アトピー性皮膚炎では、「かいかいぐじゅぐじゅのただれ」を抑えるため、ステロイド剤の軟膏を使用しますが、喘息でも同じように、気管支のただれを抑えるため、ステロイドの吸入薬を使用します。この吸入薬を咳やぜーぜーがひどくなった時だけに使用するのではなく、症状のないときにも継続的に使用することで、ただれを改善・修復し、増悪や呼吸機能の低下を防止することができます。

私は幼少期からアレルギーが強く、物心がついたころから毎晩のように喘息の発作に悩まされていました。同時にアトピー性皮膚炎も患っていました。現在でも汗や入浴後の温度変化、靴下のゴムなどで皮膚が赤くなり、強いかゆみを起こしています。しかし、幼い頃から長年付き合っている症状のため、「かゆいのがあたりまえ、咳やぜーぜーするのがあたりまえ」と、つい自分自身の治療は怠りがちになってしまっていました。患者さんに指導していながら、まさに医者の不養生です。なので、同じ悩みを持つ患者さんが、半ばあきらめてしまう気持ちが本当によくわかります。

しかし「かゆくてぐじゅぐじゅする皮膚、咳やぜーぜーする日常」は、タイプ2炎症を抑える治療で変えることができます。患者さんの「つらいのが当たり前」を変えるお手伝いができれば幸いです。

喘息はあいまいな病気

2025.09.01

西新宿内科つながりクリニックの臼井靖博と申します。
当院の「つながりブログ」をご覧いただきありがとうございます。

長引く咳や息切れなどで受診したとき、「喘息かもしれない」「喘息気味」「喘息っぽい」などと言われた経験はありませんか。当院にお越しになる患者さんの中にも「病院で『喘息っぽい』と言われたことがあります」という方がいらっしゃいます。一方で「喘息ですね」と診断結果をお伝えすると、「えっ、喘息ですか? これまで何軒も受診してきましたが、今まで喘息と診断がつかなかったのはなぜでしょうか」と驚かれたり質問されたりすることがあります。

高血圧やがんでは「高血圧っぽい」「がん気味」と言われることは少ないと思います。血圧を測定して基準を超えていれば高血圧と診断しますし、組織を採取して顕微鏡でがん細胞を認めればがんと診断します。しかし喘息には「咳が何時間続いたら」「気管支に喘息細胞がいたら」といった診断基準がありません。喘息の診断・治療の指針として、日本喘息学会が刊行している「喘息診療実践ガイドライン」にも「喘息の診断には“ゴールドスタンダード(これがあれば診断してよいというもの)”となり得る客観的な指標はない」とはっきり記されています。この「診断する明確な基準がない」ことが、医療者にとっても患者さんにとっても、喘息をあいまいで、わかりにくい病気にさせているのです。

では、どうやって喘息と診断するのでしょうか。

最も大切なのは詳しい問診です。喘鳴、息切れ、咳、痰などの症状が季節や一日の中で、良くなったり悪くなったり波のように変動する、においやほこりで咳が出る、風邪をひくといつも咳が長引く、家族に喘息の人がいる、小児喘息といわれたことがある、アトピー性皮膚炎がある、ダニ、ハウスダストなどにアレルギーがある、といったさまざま症状や背景をお聞きして「喘息らしさ」を探し出します。そのうえで、胸部レントゲン、呼気一酸化窒素濃度(FeNO)、血液中の好酸球数やアレルギー検査などを参考に「喘息」と診断をします。吸入ステロイドや気管支拡張剤を使って症状が改善するかどうかも重要な判断材料になります。

喘息はあいまいでわかりにくい病気ですが、私自身が喘息患者であることを生かしつつ、なぜ喘息と診断したのかを根拠をもって説明し、治療する努力をして参ります。

「長引く咳」とは

2025.08.01

西新宿内科つながりクリニックの臼井靖博と申します。
「つながりブログ」をご覧いただき、ありがとうございます。

前回は咳の種類(コンコン咳とゲホゲホ咳)についてお話ししましたが、今回は咳が続く期間についてのお話です。みなさんは「長引く咳」と聞くと、どのくらいの日数を思い浮かべますか。1週間? 10日? それとも1か月以上でしょうか。

咳は、持続期間によって3つに分類され、3週間以内を「急性咳嗽(がいそう)」、3~8週間を「遷延性(せんえんせい)咳嗽」、8週間以上を「慢性咳嗽」と定義しています。このうち遷延性咳嗽と慢性咳嗽が「長引く咳」と呼ばれています。つまり「長引く咳」とは3週間以上続く咳のことを指しています。

ではなぜ3週間を超すと「長引く咳」と呼ばれるのでしょうか。それは、3週間をめどに咳の原因が変化してくるからなのです。

3週間以内の「急性咳嗽」は、ウイルスなどの感染症が主な原因であり、2週間程度で軽快することが多いとされています。一方、3週間以上続く「長引く咳」は、喘息や胃食道逆流症など、感染症以外が原因となっていることが多いのです。

しかし、咳の原因が3週間経つとコロッと変わるわけではありません。長引く咳も最初はすべて「急性咳嗽」であり、複数の原因が絡んでいるケースも少なくありません。急性咳嗽で受診した患者さんの約40%が、喘息や胃食道逆流症などによる「長引く咳」であったという報告もあります。

咳はとても辛いものです。ほとんどの患者さんが、急性咳嗽の段階で「咳が続いている」と来院されます。当院では、急性咳嗽であっても「長引く咳」の問診をしていただくことがあります。これは急性咳嗽の中に潜む「長引く咳の芽」を見つけ出すためですので、ご協力をお願いします。問診結果を踏まえて検査・診断し、適切な治療を行うことで「長引く咳にさせない」よう努めております。

咳でお困りの患者さんのご来院をお待ちしております。

コンコン咳とゲホゲホ咳

2025.07.01

西新宿内科つながりクリニックの臼井靖博と申します。
「つながりブログ」をご覧いただき、ありがとうございます。

咳には二種類があります。「コンコン」とほとんど痰を伴わずに続く乾いた咳と「ゲホゲホ」と黄色や緑色の痰を伴って続く湿った咳です。コンコン咳を乾性咳嗽(かんせいがいそう)、ゲホゲホ咳を湿性咳嗽(しっせいがいそう)と呼んでいます。

同じ咳でもこの二種類の咳は、咳が出る理由が異なります。コンコン咳は、咳が出ること自体が問題であるので、咳を止める治療が必要になります。一方、ゲホゲホ咳は、気管支や肺から分泌される過剰な痰を排出させるための咳なので、痰を減らす治療が咳を減らす治療につながります

コンコン咳の多くは、喘息や感染後咳嗽などアレルギーや咳過敏が原因なので、鎮咳薬や吸入薬など、それぞれに対応する治療で咳の鎮静化を図ります。一方、ゲホゲホ咳の多くは、細菌やウイルス感染による副鼻腔炎、気管支炎、肺炎などが原因となっているため、抗菌薬や去痰薬を中心とした治療で咳の鎮静化を図ります。

当院の咳問診にも「乾いた咳(コンコン咳)ですか? 湿った咳(ゲホゲホ咳)ですか?」という質問があります。コンコン咳でも少量の粘液性の痰を伴うことがあるため、お答えに困る方もいらっしゃると思います。「湿った咳」とお答えいただいた際には、診察時に「咳とともに、必ず黄色や緑色の痰が出てきますか?」とお聞きして、本当に湿った咳(ゲホゲホ咳)かを確認していますので、あまり悩まずにお答えください。咳や痰でお困りの方の力になれれば、と治療にあたっております。ご来院、お待ちしております。